尿石症は尿路系(腎臓・尿管・膀胱・尿道)に結石ができて様々な症状を起こす病気です。
尿に含まれるカルシウム、リン、マグネシウムなどの成分が結晶化して次第に大きくなり結石(尿石)となります。
結石が尿路の粘膜を傷つけると頻尿や排尿時の痛み、血尿などが見られます。
尿路を完全に塞ぐと腎臓に尿がたまる水腎という状態になったり膀胱破裂や尿道破裂など危険な状態になります。
結石が存在する場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石に区別されますが、
犬と猫では膀胱結石か尿道結石が多いといわれています。
また尿石はその組成によって以下のように分類されます。
・リン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイト)結石
・シュウ酸カルシウム結石
・尿酸結石
・シスチン結石 など
犬猫で多いのはリン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイト)結石とシュウ酸カルシウム結石です。
このコラムではこの2つを中心に解説します。
【原因】
尿石の形成には以下のような様々な因子が関わっています。
リン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイト)結石
・尿中のアンモニウムとマグネシウムのリン酸塩が高い濃度で含まれていること(①)。
・尿のpHがアルカリ性に傾いていること(②)。
で形成されます。さらに
・飲水不足や脱水、排尿回数が減少すると、尿中の塩濃度が高くなり濃縮尿が長い間留まることになり結石が形成されやすくなります(③)。
・フード中のマグネシウム量が増えると形成が促進されます(④)。
・犬では細菌感染によるpHの上昇により尿石の形成が促進されます。猫では尿路感染がなくても形成されることが知られています(⑤)。
シュウ酸カルシウム結石
・尿中のカルシウムやシュウ酸の増加(①)
で形成されます。
・フード中の過度の蛋白質、カルシウムやビタミンD、シュウ酸の前駆物質(アスコルビン酸、グリシンなど)を多く含んだ食事も尿石の形成を促進します(④)。
・尿の酸性化は高カルシウム尿症や低クエン酸尿を促進して尿石が生成されやすくなります(②)
【症状】
尿石の存在する場所や大きさ、閉塞の程度により様々です。
・腎結石:症状を示さず大きさが変化しない場合が多いですが、結石が尿管の方に流れて閉塞する可能性もあるので注意が必要です。
・尿管結石:完全に閉塞すると症状は急速に進み、激しい痛みを引き起こします。腎臓が尿を排出できずに水腎という状態になります。
・膀胱結石:結石が小さい場合は症状が現れにくいですが、結石の数が多くなったり大きくなると膀胱粘膜を傷つけ、排尿時の痛みや頻尿、血尿などが見られます。
・尿道結石:雄では尿道が細いため、結石がつまりやすくなります。排尿時の痛み、血尿のほか、完全に閉塞すると膀胱破裂や尿道破裂が起こったり、尿が身体に不要な排泄物を外に出すことができず尿毒症になり全身状態が悪化し、腎臓は急性腎不全の状態になります。
【診断】
頻尿や血尿、排尿時の痛みなどの症状や食事内容などの聞き取り、尿検査、超音波検査やX線検査による結石の存在の確認(結石の組成によってはX線で確認できない場合もあり)、血液検査などにより診断を行います。
細菌感染が疑われる場合は、尿の培養を行い、抗菌薬の選択に使用します。
特にシュウ酸カルシウム結石では、高カルシウム血症の原因となる腫瘍、甲状腺、上皮小体の異常などがないか全身の状態を確認する必要があります。
【治療】
治療は内科的治療(特に食事療法)を行いますが、尿路閉塞があり緊急性がある場合や結石の溶解ができない場合、外科手術により尿石を摘出します。
リン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイト)結石を溶解させるためには、尿中のリン、アンモニウム、マグネシウム濃度を低下させ尿のpHを正常に戻す処方食を利用します。
また尿路感染が深く関与しているために抗菌薬の投与を行います。
シュウ酸カルシウム結石は溶解させることができないため、過剰のカルシウムとビタミンDを含む食べ物を避けたり、シュウ酸塩やシュウ酸の前駆物質であるビタミンCを多く含む食べ物を控えるようにします。
結石の生成を抑えるため、ミネラルやビタミン、タンパク量を調整し、pHを適正にする処方食を利用します。
また、水分の摂取を増やすために、ドライフードへの水の添加やウエットフードの利用などを行います。
尿路結石は再発しやすいため、食事管理や水の摂取などに気をつけ、定期的に健康チェックすることが大切です。