子宮蓄膿症とは子宮内に細菌が増殖して膿がたまる病気で、進行具合によっては細菌の毒素により全身に影響が出て死亡することもあるため注意が必要です。
子宮蓄膿症の発生には卵巣から分泌されるホルモン(プロジェステロン)が影響します。ホルモンの影響を受けた子宮は内膜が増殖し、細菌による感染を受けやすくなっています。
したがってこの病気は、長い期間ホルモンの影響を繰り返し受けている状態の犬、つまり避妊手術をしていない高齢の雌犬に多いのです。(若齢でも起こることがあります。)
【原因】
子宮内の膿汁から検出されるもので最も多いのは大腸菌で、自身の肛門や外陰部周辺からの侵入が考えられています。
前述の通り、ホルモンの影響で感染しやすくなった子宮内で細菌が増えることで引き起こされます。
【症状】
症状は病気の進行状況によって異なります。
初期段階ではほとんど症状を示さないこともあります。
一般的には食欲不振、元気消失、多飲多尿、発熱、嘔吐、腹部の膨満や下垂、外陰部の腫大などが見られます。
外陰部からの黄褐色や小豆色の膿様物が排出される場合(開放性)もあれば、閉鎖性子宮蓄膿症といって膿が排出されない場合もあります。
一般的には閉鎖性の方が開放性よりも病状が重くなることが多いとされています。
進行すると細菌毒素の影響によって全身性のショック状態に陥り死亡する場合があります。
急性経過をたどるものでは、1週間で重篤な症状を示す場合もあれば、1ヶ月以上にわたり少しずつ病状が進む場合もあります。
【診断】
血液検査では、多くの例に白血球数の増加が認められ、感染細菌の内毒素によると考えられる腎障害が原因でBUNが増加する場合があります。
超音波検査では、液体が貯留した子宮を確認します。
超音波検査では子宮の大きさだけでなく、子宮内膜の肥厚が確認できる場合があります。
【治療】
症状に気づき来院する頃には重篤な状態になっていることが多い病気です。
治療としては、外科手術による卵巣と膿の溜まった子宮の摘出が推奨されています。
若齢で発症し今後出産を考え子宮を温存したい場合などでは、プロスタグランジンと言って子宮を収縮させる薬剤を用いた内科的治療もありますが、完治しない可能性があり、治ったとしても時間を要すること、再発の可能性が高いことなどを考えなくてはなりません。
重篤な状態では動物の命を優先させるため選択されません。
【予防】
出産を考えていない場合は、避妊手術を受けることで予防できます。