短頭種って?
短頭種とは、頭の幅に比べ、鼻の長さの短い犬のグループです。
皆様がよくご存知なのは、ブルドッグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、パグ、ペキニーズ、シーズーなど、鼻が潰れていてブーブー呼吸しているような子達だと思います。
実は隠れ短頭種としてチワワやキャバリアもいます。
このような子達は遺伝的に呼吸器(鼻、軟口蓋、喉頭、気管など)に形態的な障害を持っていることが多く、それらを総称して「短頭種気道症候群(Brachycephalic Airway Syndrome : BAS)」と言います。その症状は若齢から見られることが多く、歳を重ねるごとに進行していく慢性疾患です。
どんな症状?
いびきや睡眠時無呼吸、ピーピー、ブーブー、ガーガーという呼吸(スターター、ストライダー)や、咳が出る、息を吸う時に頑張っている(苦しそう)、運動(興奮)時にすぐ疲れる、暑さに弱いなどといった症状です。
進行すると、チアノーゼや失神を起こし死亡する場合もあります。
また、多くの子で胃炎や食道炎も併発し、吐物の逆流による誤嚥性肺炎のリスクが高いです。
診断は?
一般的には、外貌、呼吸状態の確認、レントゲン撮影で行います。
また、エコー検査や透視検査を行い、呼吸器の運動性を確認したり、内視鏡検査で確定診断をしたりする場合もあります。
治療は?
緩和的に内科治療(冷却や鎮静、酸素化、抗炎症治療、消化器症状の軽減)をすることがありますが、根本的な解決には主な異常に対する外科治療を行います。
1.外鼻孔狭窄
鼻の穴が狭くなって呼吸がしにくい状態です。皆様も軽く鼻をつまんで呼吸していただくと実感できると思います。
→外鼻孔拡大術を実施します。
メスや生検用パンチを使用し、鼻孔の余分な組織を切除、整形して鼻孔を広げます。
2. 軟口蓋過長
軟口蓋(口腔内の上顎の部分で柔らかくなっているところ)が長すぎて、空気の通り道(下図の喉頭口)を塞いでしまう状態です。
→軟口蓋切除術を実施します。
メッツェンや超音波メスを使用し、空気の通り道に覆いかぶさった軟部組織を切除します。
3. 喉頭虚脱
喉の入り口の運動障害により、呼吸や嚥下がうまくいかない状態です。
→軽度の場合は喉頭小嚢切除術を実施します。
外転して空気の通り道を邪魔している喉頭小嚢の粘膜を切除します。
→重度の場合は披裂軟骨側方化術などを実施することがあります。
披裂軟骨と輪状軟骨を糸で結んで引っ張り固定し、空気の通り道を拡げます。
4. 気管虚脱
気管の膜性壁がたるむことにより気管が潰れてしまう状態。
→上記1~3の治療を行い、改善がない場合には、気管を拡げる手術(気管外プロテーゼ、ステントなど)を実施します。それでも改善がなければ、気管切開術を行うこともあります。
短頭種気道症候群(BAS)は重度になると命に関わる疾患であり、進行とともに手術のリスクが大きく上昇します。「まだ元気だし様子を見て大丈夫かな?」、と言っている間に悪化してしまうことも考えられます。
若齢時の予防的手術により本症の進行を抑えることができるため、早期の診断が重要です。
当院の院長は、「犬・猫の呼吸器臨床研究会」に所属しており、より高度な治療が必要な場合は、呼吸器専門動物病院への紹介も可能です。気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。
院長 田中 啓之
院長紹介ページはこちら→https://kunitachi-central-ah.com/about/staff/