IBD、リンパ腫と内視鏡検査
近年明らかになってきた病気が炎症性腸疾患(IBD)という病気です。
原因はいまだ完全には解明されていませんが、過剰な自己免疫や、食事に対する異常反応、腸内細菌バランス異常が複雑に組み合わさっていると言われています。
炎症性腸疾患(IBD)に関しては様々な論文が出ており、以下のように定義されることが多いです。
- 3週間以上続く慢性の消化器症状(嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少等)がある
- IBD以外の原因による消化器疾患(例:腫瘍やホルモン疾患、膵臓疾患等)が除外されている
- 内視鏡検査にて腸粘膜に炎症性細胞浸潤が認められる
日本では②、③までしっかり診断されている子は少なく、多くの子は一時的な対症療法でしのいでいるのが現状です。
これでも症状が落ち着いてくれたら良いのですが、間違った診断で治療を始めることは、症状の悪化につながります。
例えば、IBDと仮診断し免疫抑制療法を行った場合、もし腫瘍が隠れているとその腫瘍は免疫の力から逃れ、大きく成長してしまいます。
IBDと、腸の腫瘍で多いリンパ腫は、症状や超音波検査所見からは見分けがつきにくく、内視鏡検査で組織生検をすることで初めて確定診断がつきます。
ですので、このような症状が続く子の場合は、内視鏡検査をしっかり行い、的確な診断のもとで治療を行うことが必要です。
当院では、内視鏡検査の経験豊富な獣医師が、最低限の麻酔時間で検査を実施します。内視鏡検査自体は非常に負担の少ない検査です。
国立中央どうぶつ病院内視鏡検査の流れ
麻酔をかけて大丈夫かどうか、一般身体検査と血液検査をして確認します。その後、検査の詳細と注意点をご説明いたします。
絶食期間を指定しますので、その時間はご飯をあげず胃と腸を空にします。
浣腸により便を全て排出したのち、安全を期すため術前に静脈点滴を流し、低タンパク血症がある場合はコロイド溶液を注入し身体の状態を整えます。スムーズに行けば麻酔開始後40分程度で内視鏡検査は終わります。
念のため、静脈点滴を流しながら1泊入院していただき、翌日の退院です。
その後は通常通りの生活を送っていただいて構いません。
採取した検体を病理検査機関に送り、結果を待ちます。
約1-2週間で診断が確定しますので、それをもとに治療法を決定します。
(参考)院長の以前の職場で調査した結果、内視鏡検査を実施した120症例のうち、IBDが56%、アレルギーが6%、感染性の胃炎、腸炎が14%、悪性腫瘍が5%、異物が19%でした。
診断によって大きく変わりますが、IBDの場合は食事療法、抗菌薬、整腸剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、脂肪幹細胞療法等を実施します。
リンパ腫の場合は、化学療法(抗がん剤)、抗炎症剤、サプリメント、自己リンパ球活性化療法、樹状細胞療法等を使用します。その子の症状に応じて、一番負担が少なく効果の大きい治療法を選択させていただきます。
詳細、ご不明点はスタッフにお尋ねください。お電話でのお問い合わせも可能です。